深き海より、蒼き樹々の呟き

by 深海 蒼樹(ふかみ そうじゅ)

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キミは、カモノハシを見たか?(2)

      2014/09/19

カモノハシ

 前編を読みたい方は、こちら(『キミは、カモノハシを見たか?(1))を、どうぞ。

 さて、前回はカモノハシの話をするつもりが、ついつい、ハリモグラやカンガルーの話になってしまった。僕も、記事を書きながら、もうこのまま感動的なカンガルーの話に切り替えた方がいいかなと思ったりもしたのだけれど、今回はしっかりと軌道修正して、カモノハシについて書いていこう。

 前回も書いたように、その頃半ズボンがよく似合う小学生だった僕は、日曜日の午前のゴールデンタイムに見たテレビで、カモノハシなる動物がこの地球上にいることを知った。
 僕は、今でも、不思議なんだ。と言うか、今となってはすっかりと思い出せないと言った方がいいだろう。いったい、カモノハシのなにがこんなにも僕の心を鷲掴みにしたんだろう? 正直なところ、誰か、説明してくれないかなって他力本願丸出しなくらい、僕にもよくわからない。
 ただひとつだけ、半ズボンから青白い肌の細い足を出していた小学生の僕は、
『いつか、絶対に、カモノハシを見てやる』
と、心に誓ったのは覚えている。しかし、なんでそんなにも強くそう思ったのかは、忘れてしまった。
 ひょっとしたら、カモノハシについて説明しているうちになにかを思い出すかもしれないし、そんなことを期待しながら、つづきを書くことにしよう。

 カモノハシの特徴と言えば、一番目を引くのは、そのくちばしであるという僕の指摘に、誰も異存はないはずだ。しかも、そのくちばしは、やけに扁平で黒く、靴と一緒に並んでいたら、100人中75人くらいは靴べらと間違って使ってしまいそうなカタチをしている。そして、くちばしと体の比率がおそろしく悪い。つまりは、くちばしが大きすぎる。
 たとえば、キリンの絵を描くときには、思いっきり首を長く描くように、ゾウの絵を描くときには、思いっきり鼻を長く描くように、もしもカモノハシの絵を描く機会があるなら、そのくちばしを大きく描くといいだろう。くちばしと体の割合を1:2.5にして描くというのが、僕のオススメだ。

 そして、これは、あまり知られていないことだと思うんだけれど、カモノハシは、毒をもっている。
 なんで知られてないかと言うと、まぁ、そもそもカモノハシの絶対数が少ないことと、その生息地がかなり限定されていることから、当然のことかもしれない。残念ながら、山道を歩いてたら、カモノハシに出くわした、なんてことが、日本では起こりえない。もしもそんなことが起こったなら、それは大事件だ。もしもそんなことがキミの身に起こったら、キミは山道のどこかで時空を越えてしまう入り口を偶然にもくぐり抜けてしまい、自分がオーストラリアにワープしてしまったことを疑った方がいい。
 不幸にも、どうやら自分がオーストラリアにワープしてしまったようなら、確認のために、向こうから歩いてくるハイカーに、こう尋ねてみよう。
 ”What day is it today?”(今日は、何曜日だい?)
 答えてくれた返事が、SundayであれWednesdayであれ、何曜日であってもいいのだけれど、そのとき、キミが注意深く聞き分けなければならないのは、dayの部分の発音だ。そこが、デイではなく、アイと聞こえたなら、間違いない、キミがいるのはオーストラリアだ。
 オーストラリア人に、”Have a good day!”を、「ハヴ・ア・グッド・ダイ!」(“Have a good ‘die’!”)と発音されて、不吉な気持ちになったことを思い出してほしい。
 もしも、キミが英語が得意なら、
「昔々、フェンス際の魔術師としても有名だった、ジャイアンツの高田選手の背番号は何番だったっけ?」
と、尋ねてみるのもいいかもしれない。
 そのハイカーが、かなりの日本通で、オーストラリア人には珍しく野球好きで、なおかつあの頃のジャイアンツファンなら、きっと答えてくれるはずだ。
 ”That’s eight.”
 その答えが、エイトではなく、アイトと聞こえたなら、間違いない、キミは100%オーストラリアにワープしたことになる。
 QANTASやJALに1円の航空代金を払うこともなく、自分の足でオーストラリアに辿り着いたことを祝福するべきだろうか? もしも、日本に帰りたいとキミが思ったときにも、この時空を越える秘密の入り口を、キミがうまく見つけられるのか、僕にはわからないけれど。

 あれ? また、僕は、余計な回り道をしてしまっているようだ。カモノハシの毒について、話していたんだっけ?
 『キミは、カモノハシの毒にやられたことがあるか?』
っていうのは、オーストラリア人100人に聞きましたっていうテレビ番組があったとしても、おそらくボツになるような質問に違いない。
 カモノハシは、食用ではないし、たとえ見つけたとしてもそれを捕まえようと考える人がどれくらいいるんだろう?
 しかしながら、もしも、オーストラリアのどこかで、カモノハシに出くわしたなら、無理に彼を捕まえようなんて思わない方がいい。今、僕は『彼』と言ったが、カモノハシには雌雄の別がある。そして、雄にだけ、毒があるのだ。それは、後ろ足の蹴爪と呼ばれるところから分泌される。
 カモノハシの毒によって、人間が死に至ったという報告はないらしいが、浮腫があらわれ、その痛みは数日から場合によっては数ヶ月もつづくらしい。
 つまりは、こういうことだ。もしも、キミが、道でカモノハシに出会ったら。そして、そのカモノハシが、雄だったら。キミは、彼の後ろ足で自分の足を踏まれないように気をつけなければならない。それは、散歩に出かけた山道で、オーストラリアにつづく入り口を偶然にもくぐり抜けないように気をつけなければならないのと同じようにね。

 (つづく…はず…)
つづきは、こちらキミは、カモノハシを見たか?(3)

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