深き海より、蒼き樹々の呟き

by 深海 蒼樹(ふかみ そうじゅ)

*

キミは、カモノハシを見たか?(1)

      2013/09/11

カモノハシ

 Pinterestを眺めていたら、ん? と、スクロールを止めて、ある写真に目が釘付けになった。
その写真には、platypus、とだけ短いキャプションが、書かれていた。
 platypus!!!  僕は、心の中で、懐かしいその単語を叫んだ。

 少しだけ、高飛車に言わせてもらえるなら、platypusなんて単語を知っている日本人が、どれくらいいるのだろう?

 platypusとは、所謂、カモノハシのことだ。僕が、初めて、この世に『カモノハシ』なる生き物がいることを知ったのは、かれこれ40年ほど前の話になる。
 その頃、僕は小学生で、毎週日曜の午前に放送されるテレビ番組が、楽しみで仕方なかった。それは、『ムシムシ大行進』という昆虫の生態に関する番組と、番組名は忘れてしまったが、それにつづいて放送される動物の生態に関する番組だった。
 確か、『ムシムシ大行進』は、なべおさむがナレーターだった気がする。かすかな自信しかないけれど。

 ところで、カモノハシが、何故、有名であるかは、みなさんもご存知だろう。有名というか、なぜに、カモノハシなる名前をこんなにもたくさんの人々が知っているのか。そう、カモノハシは世にも珍しい、哺乳類だからだ。決して、そのルックスだとか、ポピュラリティーによって有名なわけではない。中学や高校の生物の授業なんかで、生物の例外の珍しいものとして、カモノハシは取り上げられ、説明されるのだ。
 そう、カモノハシは哺乳類に属する生物である。しかしながら、で、あるにもかかわらず、カモノハシは卵を産む。卵から産まれてくる哺乳類は、カモノハシだけである。いや、ごめん、勢いをつけすぎて言い過ぎた。『カモノハシだけである』は、一旦、忘れてほしい。
 もう一度、繰り返してみよう。カモノハシは、卵から産まれる哺乳類である。

 こんな話を聞かされても、あれから40年の歳月を経た今の僕なら、たぶん、こう思うかもしれない。
 『だから?』
 あまりに、短くて乱暴だと思うなら、もう少し長く丁寧に僕の気持ちを説明してみよう。
 『哺乳類が卵として産まれるのは確かに珍しいことだとは思うけれど、だから、それがなんだって言うんだい?』
 カモノハシが卵から産まれようが、ほかの哺乳類と同じように赤ん坊として産まれようが、僕としてはなんら不都合はないし、そんなことでカモノハシに特別な関心を寄せる気持ちもない。だって、同じように、哺乳類でありながら産卵をする動物、『ハリモグラ』について、僕はなんの感想も、関心も持ってない。
 せっかく書いたから、もう少し説明しておくけれど、『ハリモグラ』というのは、いわゆる『モグラ』ではない。『モグラ』とは、まったくの別物だ。いや、またしても、ごめん。『まったくの別物だ』も、一旦、忘れてほしい。できれば、『まったくの別物らしい』に置き換えてもらえればありがたい。僕は、『ハリモグラ』の多くを、Wikipediaに教えてもらっているのだから。

 カモノハシにしても、ハリモグラにしても、生息地はオーストラリである。オーストラリアと言えば、羊だとか、カンガルー、コアラなんて動物が真っ先に頭に浮かぶものだけれど、実は、国土の多くを占める砂漠地帯もあって、蛇の種類も豊富だったり、動物学的にも大変興味深い大陸のひとつである。
 カンガルーやワラビーという一見ポピュラーな動物にしたって、実は有袋類の珍しい動物なわけだし、カンガルーとワラビーの中間に位置するワラルーなんていう動物もいる。
 僕は、昔々、カンガルーの生態の本を読んだことがあるのだけれど、生まれたての赤ん坊が母親の袋の中の乳首に辿り着くまでの道のりの長さと、そうして命が育まれる様子に、深く感動した覚えがある。
 なぜなら、カンガルーの赤ん坊というのは、体重が1グラムにも満たない。単位は間違ってないよ。キログラムではなくて、グラムだ。しかも、1グラムにすら満たない。
 母親は、総排出膣と呼ばれる膣から、袋の入り口までを舐めて唾液で濡らし、赤ん坊に進むべき道を教える。しかしそれは、体重1グラム、体長1センチから2センチしかない赤ん坊にとって、なんと長い道のりだろう。
 勿論、その1グラムの体は、カンガルーの形をしているわけではなくて、その外見は虫の幼虫のようなものだ。そう、カンガルーというのは、言い換えれば、かなりな早産で未熟児の状態で産まれてきて、母親の袋の中でカンガルーとして形作られていくのだ。
 ついでに言うと、カンガルーの母親は、環境が出産に適していないと判断したら、出産を『留保』して、出産時期を遅らせることができるのだ。興味のある方は、Wikipediaのこちらで。

 (あれ? カモノハシの話が…、それはまた…、つづく…)
続編は、こちら

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