深き海より、蒼き樹々の呟き

by 深海 蒼樹(ふかみ そうじゅ)

*

ここではない、どこかへ

      2013/09/11

今夜もこうして、僕はキーボードの上に礼儀正しく十本の指を乗せ、なんのひらめきもないままになにかを書こうともがいている。そんなに無理をして書く必要があるのだろうか?という疑問が、僕の頭に浮かばないわけではない。
 そして、おそらく、考えるまでもなく、「必要があるのか?」という問いに対する答えは、「ない」だ。
 だって、これと言って書くものも思い浮かばなくて、その輪郭さえも掴めていないのに、無理矢理に書く必要なんてないに決まってる。そんな無駄な努力をする必要がどこにある?

 と、ここまで書いていて、ふと僕は思ったんだ。
 「書く」という言葉を、その対極にある「読む」という言葉に置き換えて、「なぜ僕は書くのか?」ではなく、「なぜ僕は読むのか?」を考えてみると、なにかが見えてくるのではないだろうかと。それはネガとポジの関係のように、その反対側から透かし見ることで、なぜ僕は書こうとするのかが、わかるかもしれない。
 そして、なぜ僕が書けないのかも、わかるかもしれない。

 「読む」ことでどこにも行けないなら、僕は「読む」必要がない。
 なんの前ふりも分析もなく、いきなり結論を書いてしまうのは、僕の悪い癖だ。しかし、仕方がない。それが僕のやり方なわけだし、いちいち説明しているのが面倒なくらい、僕は書くことに関してスランプ中なのだから。

 僕は、君を連れてどこかへ行きたいんだ。
 くだらない冗談を言ってられるくらい、僕には時間も余裕もあるはずもないんだけれど、僕が「なぜ書くのか?」を、別の言葉にすればそういうことになる。
 そうだ、つまりは、これは冗談でもなんでもなくて、僕の真摯な思いなわけだ。
 『僕は、君を連れてどこかへ行きたいんだ』
 大切なことだから、二重カギ括弧で囲んで、繰り返してみた。少しは僕の真剣さが伝わっただろうか。

 そして、僕は更に考えてみた。なぜ、ここのところ、書けないのか?
 それは、書いていても、僕自身がどこにも行けていないからではないのだろうか?実際に、ここのところどんな文章を書いていても、どこかに行けている気がしない。ここではないどこかへ行けたという実感や達成感が、感じられるような文章が書けていないのだ。
 だから、申し訳ないけれど、君をどこにも連れて行けやしない。僕の文章を読んだところで、君はどこへも行けないのだ。そして、僕自身も、どこにも行けずにただ同じ場所にとどまりつづけている。
 そんなのは、イヤだ。書いても、どこへも行けないなんて。まったくもって、「書く」意味なんてないじゃないか。

 では、この文章はどうなんだって?
 どこにも行けてやしないと、正直に言うと、僕だって思ってる。でも、僕のいるこの場所から、5cmくらいは…、いや、なんでもない、そんなセンチメートルなんて話を持ち出すほど、僕の志が低いとは思わないでほしい。

 大丈夫、もう少しの辛抱だよ。
 とびっきりの文章で、次回こそ、僕は君をここではないどこかへ連れて行こう。
 約束だ。指切りをして、でも今夜はあきらめて、眠りにつくことにしよう。

 - ひとりごと

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