深き海より、蒼き樹々の呟き

by 深海 蒼樹(ふかみ そうじゅ)

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生まれて初めての草レース(観戦編)

      2017/08/09

 2017年3月5日、はりちゅうこと播磨中央公園で行われる草レースが僕のデビュー戦になるはずであった。そうだ、昨年の夏頃、一度はここに目標を置いたのだった。
 3月というのは、2016年の5月からロードバイクに乗りはじめた僕としては、ちょうど小慣れたあたりではないだろうかと思ったし、冬場は誰だって寒い中自転車に乗るのはつらくてエントリーする人数も少ないだろうと予想してのことだった。そう、まさかその「誰だって」のなかに、僕自身が飲み込まれてしまうとも知らずに…。
 はい、結局のところ、エントリーすらしてないです。だって、2月はまるまる自転車に乗ってないし。1月だってたったの1回実走しただけだし。3本ローラー買ったのに全然活用できなかった。だって…、(50歳を越えるおっさんの「だって」の繰り返しには辟易だろうが)、雪は2メートル積もるは、とにかく寒いは、路面は凍るはで、とっても自転車に乗る気分になれなかったのだ。しかも、やっと路面が乾いたかなと思っても、塩化カルシウムなどの凍結防止剤や融雪剤がばら撒かれた道を走ろうという気にはなれなかった。まさか汗ではなく、塩化カルシウムで自転車が錆びるリスクに直面するなんて予想もしていなかった。諸々ヨミが甘かったというか、シビアな冬の現実に打ちのめされていたのだ。

 エントリーはしてないものの、その日、僕は休みをもらっていた。サービス業従事者が日曜日に休みをとるというのは、なかなかに心苦しいことではあるのだけれど、シフト管理者がやりくりしてくれた。そもそもは、デビューするはずだったのだ。そのことを知っているシフト管理は、「走らなくても、一度見てきたらどうですか」と、勧めてくれたのだ。こういう時、自らもランナーであるシフト管理者は理解があるというか、同志というべきか。

 そして、もうひとつ目的があった。はりちゅうで会ってみたい人がいたのだ。会うと言っても、ただ、「やぁ、応援してるよ」とひとことかけるだけのことだった。それ以上の付き合いがあるわけではない。僕が一方的にその人を知ってるだけのことだ。
 はりちゅうでロードレースが行われていることを知ったのは、彼がYouTubeにアップしていた動画をみつけたからだった。どうやって彼の動画にたどりついたのかはよく覚えていない。カメラを搭載したロードバイクでレースを録画し、動画をアップする人は彼以外にもいる。ただ、それに顔を出して、レースを振り返りながら実況解説をしている動画は滅多にない。実況解説どころか、レースで何着だったのかというリザルトすら明らかにされていないことも多い。リザルトを明らかにすれば、個人が特定されてしまうからだろうか。

 彼の動画を好きになった理由が、ほかにも幾つかある。
 66歳だったかのレース参加者のことを、

こんな66歳っていますぅ? がっつりロードバイクに乗って、さっきの下りのコーナーでも踏んでましたよ。すごい66歳ですよね。

と、素直な驚きとリスペクトが聞いている僕をも気持ちよくさせた。
また、自転車やパーツのグレードの話になったとき、

もうこれ以上伸びしろがなくて、あとは機材とかメカとかそっちでしか勝負するしかなくなったら、グレードにこだわろうと思います。
 

と言っていたし、動画中にTiagraらしきコンポーネントのロードバイクに乗る選手を見つけたときは、

時々、レースに出るなら105以上のコンポでないと無理ですよねとか聞かれるんですけど、全然いけますよね。Tiagraでも早い人は早いです。

と言っていたのも、なんだか気持ちよかった。

 ちなみに、はりちゅーのロードレースの一番下のビギナーIIのカテゴリーでは、ロードバイクでなくても参加できる。クロスバイクでもいいのだ。要は、それでも走るか走らないかということだけのことなのだ。

 運よく、彼がスタート前トイレから出てきたところで声をかけることができた。温かいくらいの日差しの日だというのに、長靴こそ履いてないとは言え、兵庫県北部の雪国から来た僕は場違いな重たいコートを着ていたし、年齢だって50歳をとうに過ぎている。いったいなにものが声をかけてきたんだろうと、彼もさぞや驚いたと思う。一歩間違えればストーカーだ。(いや、すでにストーカーみたいなものかもしれない)
 でも、僕は、彼に声をかけたかったのだ。一歩を踏み出すためにも。せっかくはりちゅーまでのこのこやってきて、スタート直後の上り坂が思った以上にきついことを知って折れてしまった心を、いま一度立て直すためにも。
 そして、レースに出るなんて考えてもなかった僕が、彼の動画を見てレースに出たいと思ったことを伝えたいと思った。おそらく、彼が僕を見た瞬間、僕がロードバイク乗りだとは到底思わなかっただろうけど…。(なんせ、ロードバイク買ったときより、体重増えてるし…)

 褒めすぎるのはよくないかもしれないけれど、彼のレース動画を見て実況解説を聞いていると、自転車レースというものが素人ながらよくわかる。その駆け引きだとか、タイミングだとか。完走が目的ではなく、一番をとるためには、何が必要かとか。
 草レースなので参加人数もそんなに多いわけではないし、距離もそんなに長いわけではない。集団と言ったって、基本は個人参加なのでそれを統率するようなチームやリーダーがいるわけでもない。早々と集団からちぎれたり、集団そのものが形成されない場合もある。だからこそ、よくわかる。
 話はかわるけれど、昔々楽器を習ってた頃、うまい人の演奏を聞くのも勉強になるけど、自分と同程度の人や下手な人の演奏を聞くのもすごく勉強になった。なぜうまくないのか、どこがへたなのかといったことを理解することが、すごくタメになったのだ。

 次回のレースは、7月2日に設定されている。秋頃かと思っていたら、夏の初めだ。時間がたっぷりあるとは言えない。しかも、4月からは新年度新学期になって新たにロードバイクに乗るという人も増えることだろう。そんな人のモチベーションとしては7月のレースなんてピッタリだ。多分、参加者だって3月のレースより多いはずだ。
 というわけで、強者どもが鼻息荒く参加しそうな夏のレースに向けて、僕なりにがんばってみたいと思います。
 弱気になったら、彼の動画をまた見ることにしよう。

あっとフレミーロードバイク
サマーエンデューロ in はりちゅー2015

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