深き海より、蒼き樹々の呟き

by 深海 蒼樹(ふかみ そうじゅ)

*

『羊と山羊をめぐる冒険』に出る前に—羊と山羊の見分け方

   

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 2015年も早いもので2月が過ぎていこうとしている。そんな中、僕には気がかりなことがあるのだ。
 それは、今年(2015年)の干支がひつじだと知ったときから、漠然と僕の頭のなかに浮かんでいた素朴な疑問である。
 「ん?2015年の干支は羊なのかぁ…ふーん、羊かぁ…、で、山羊ではないんだよね?…ってか、羊と山羊って親戚かなにかなの?…いや、そもそも、羊と山羊ってどこがどう違うの?」
という、古今東西老若男女を問わずして、人生のなかで一度は出くわすであろう大きな疑問に、僕も出くわしてしまったのだった。
 たとえば、『羊をめぐる冒険』の「僕」が、この世界にいるすべての羊の中から、背中に星のついた羊を見つけ出せと、ある日突然に命令されたように、僕だってあなただって、1000匹の羊のなかに紛れ込んだ山羊を見つけ出せと、もしくは、1000匹の山羊のなかに隠れている羊を見つけ出せと、黒塗りの高級車に乗って、いかにも他人の「No」を聞き入れないような種類の人々に、明日の朝、家の玄関のドアを開けた途端、そう強要されるかもしれない。いや、ひょっとしたら、それは明日なんていう悠長な話ではなく、スマホのアラームが設定されているかを二度確認してやっと安心して寝ようとしたその時に、彼らは土足のまま部屋までやってきて、そう告げるかもしれない。
 そもそも、「1000匹の羊に紛れ込んだ山羊1匹」と「1000匹の山羊に紛れ込んだ羊1匹」では、どちらが見つけ出しやすいんだろう?
 もっとそもそもの話で言うと、羊や山羊は「匹」という助数詞で数えていいんだろうか?
 それとも、「1000頭の羊に紛れ込んだ山羊1頭」もしくは、「1000頭の羊に紛れ込んだ山羊1匹」とか、羊と山羊では助数詞さえ違ったりするんだろうか?
 とにかく、融通のきかない黒塗りの高級車に乗った彼らがやってくる前に、調べておくことにしよう。

 これが、羊だ。
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 そして、こっちが、山羊。
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 う~~~ん、調べ物はここまででいいかな?
 たとえ、物騒な人々がやってきたとしても、これだったら、なんとか問題なく見つけ出せそうな気がしてきたんだけど、それはお気楽すぎるだろうか?
 だって、ほら、色が全然違うから、羊が1000匹なら、灰色のモコモコの中から純白を見つけ出せばよさそうだし、山羊が1000匹なら、純白の中についたシミ汚れのような点を見つけ出せばいいわけだし、たとえ羊が10000匹であったってすべては簡単に解決するような気がしてきた。
 それでは、おやすみ。

 ………………………………………………
 いやいや、それにしても、なんだか、うまく眠れないのは、僕だけだろうか?
 こういう時は、羊を数えるんだっけ?
 いや、それよりも、パッと見の色の違いだけではなく、もう少し羊と山羊の違いについて調べた方が、さっさと眠りにつけそうな気がするんだけれど、どうだろう?
 賛成多数ということで、もうしばらくおつきあい頂きたい。

 とにかく、色だけではなく見た目で見分けようとするなら、羊と山羊にはいくつかの相違点がある。
 ただし、羊の中や山羊の中にも特殊な種類や、例外的な事例があったりするので、ここではあくまでもごくごく一般的な羊と山羊について考えることとする。
 ここまで読んできてくれたなら、このエントリーが生真面目な内容でないことは十二分にわかってくれているとは思うけれど、念の為にね。

 まずは、さっきの画像をもう一度見てもらおう。
 よくわかるのが、羊にはあごひげがなくて、山羊にはあごひげがある、ってことだ。
 あごひげに少し似ているものに、肉垂と呼ばれるものがある。喉のところに、ついている、ビラビラしたやつだ。鶏なんかの喉にも付いているって言えば、あぁ、アレねと、わかってもらえる気がする。
 そして、しっぽについて言えば、羊のそれは長く、山羊のそれは短い。ただし、家畜として飼われている羊のしっぽは、排泄物が付着しないように切られている場合もあるらしいので、短いから山羊だとは断定できないようだ。しっぽを切られた羊の可能性がある。
 角は、羊にも山羊にもどちらにもあったりするけれど、羊のは巻き巻きな角で、少し長めの髪を耳にかけているようなイメージで、山羊の角は鹿のように天に向かって伸びてるイメージだ。と思ったら、そうではない羊もいるようなので、これは却下。
 まぁでも、こうやって挙げていくと、確かに色々と違いがあることがわかってきた。

 そして、食べるものなんだけれど、

黒やぎさんからお手紙着いた
白やぎさんたら読まずに食べた
仕方がないのでお手紙書いた
さっきの手紙のご用事なあに

と歌にもなっている通り、山羊は紙を食べる。けれど、基本的に、羊は紙を食べない
 羊は、所謂、草を食べて生きている。草食動物の代表として、羊が引き合いにだされるのもこのイメージのせいだろう。
 しかし、羊は、草しか食べないのだ。それに引き換え、山羊は、草でなくても、植物ならなんでも、葉っぱでも実でも食べるのだ。だから、木材を原料とする植物繊維から作られた紙でも、山羊は食べるのだ。けれど、決して好んで食べるわけではない。それは、山羊に代わってはっきりと言っておこう。しかも、今の紙というのは、植物繊維だけでなくそこに何かが印刷されていたりするなら、そのインクだとか諸々のものも含まれているので、無闇に与えてはいけないということを、覚えておいてほしい。
 山羊のために、もう一度書いておこう。
 山羊は、決して紙が好きで食べているのではない。

 では、性格的にどうかと言うと、そのイメージ通り、羊は非常におとなしく優柔不断な動物である。それゆえに、牧羊犬という犬の言うこともよく聞いてしまうのだ。羊自身が賢いとか、頭がいいとかというよりは、おとなしく犬のいうことを聞いてしまうということのようだ。
 それに引き換え、山羊は攻撃的な動物である。そのせいだろうか、聖書の中でも、羊は「迷える子羊」と人間に喩えられ、山羊は悪魔に喩えられたりする。
 そして、山羊は、高いところに登りたがる。絶壁の岩場を登っていくのは、山羊だ。時として、ほんの少しでも高いところがいいらしく、こんなこともするようだ。

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 もしもこういう光景に出くわしたなら、間違いなく、上に乗っているのが山羊ということだ。そして、こんなことをされても許してしまうのが、おとなしい羊というわけだ。

 最後に、鳴き声について書こうと思う。
 文字に起こすとしたら、どちらもメェ〜としか、書きようがない。
 けれど、鳴くか鳴かないかで言えば、羊はあまり鳴かなくて、山羊はよく鳴く。
 僕は、車で20分ほどで行くことのできる牧場公園の羊と山羊を思い出してみる。そう、なぜだか、彼らは、一緒に放牧されていることが多いのだ。そして、羊は僕らに無関心にただじっとしていて、山羊はなんだかいつも僕らにちょっかいを出してくるような気がする。
 そして、山羊は、メェェェェェェェと鳴き、羊は、たまに、めぇと咳き込むように短く鳴く。
 もしもあなたが山羊の鳴き声を真似たいなら、メェェェェェェェェェと、この小さな「ェ」がたくさん入るところを上手に真似ればいい。これが、一番大切なポイントだ。

 というわけで、もうこれで、黒塗りの高級車に乗った融通のきかない連中があなたのところにやってきて、「100万匹の羊の中に紛れた山羊を見つけ出せ」と言われても、大丈夫だというわけだ。
 僕もなんとか書ききれたので、無事に3月を迎えることができそうな気がする。
 ちなみに、来年の干支が猿だからって、猿と人間の見分け方なんてエントリーを書く予定はないことを付け加えておく。
 最後までおつきあい頂き、ありがとうございます。

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