深き海より、蒼き樹々の呟き

by 深海 蒼樹(ふかみ そうじゅ)

*

隣りの県、鳥取県について語ってみる

   

 まず、僕の居場所について説明しておいたほうが、いいだろうと思う。なぜなら、隣りの県なんて言うと、大抵の人は、僕が島根県在住だと考えるような気がするからだ。
 まぁ、有名になった、島根県は鳥取県の左側ですという自虐的アピールが功を奏してか、単純に、出雲大社の大ブームのおかげか、現在は島根の方が鳥取よりずっと旬だ。
 加えて、個人的に残念なことは、J2にいたガイナーレ鳥取が、遂に入れ替え戦に負けて、J2から落ちてしまった。来年からは、新たに設けられるJ3で戦うことになるらしい。

 僕は、兵庫県に住んでいる。
 しかしながら、兵庫県と言っても神戸ではないし、根っからの兵庫県民というわけでもない。
 僕は、大阪で生まれ育ち、働き出してからの20代の数年を東京で過ごし、そして、また大阪に住んでいたので、ざっくりと計算すると、大阪29年、東京6年、兵庫15年といった感じだ。

 そして、今は、兵庫県の中でも、日本海側の鳥取県寄りの地域に住んでいる。勿論、兵庫県はれっきとした関西エリアであるばかりか、港町神戸を有して関西の一角を担っているわけでもある。
 ただ、僕の住んでいる兵庫県日本海側鳥取寄り、もしくは、ほとんど鳥取かなっていう地域は、兵庫県でありながらも、山陰地方と呼ばれることになんの違和感も抵抗もない地域である。
 いわゆるずっとここで暮らしている人々が、どう感じて、どう思っているのかは、よそ者の僕には、イマイチよくわからない。
 でも、この地域よりも、鳥取市内の方がよっぽど都会だということは、みんなが認めるところだろう。そして、ちょっと気張った買い物に行くなら、鳥取市内にあるイオンモールに行くのだ。
 一抹の、悔しさをにじませながらも。

 いや、地元の人達が悔しさをにじませているかどうかは、わからない。僕の、勝手な推測と言うか、僕が、そうだというだけのことだ。
 兵庫県に住んでるのに、なんで、鳥取の方が都会なんだ?
 と、僕は、頭だとか、理性ではなく、感情的に時々そう思ってしまう。
 仕方のないことではある。地理的、交通の便的に、そうならざるをえないのだ。神戸は、日帰りできなくはないが、あまりに遠い。これが、兵庫県北部の中でも、もう少し南部の地域なら、姫路に出るという手もあるのだけれど、ここからは姫路すら少し遠い。
 もしくは、遠いとかといった距離的問題はさておき、姫路に行くよりも、鳥取のイオンモールにいる方が、変な緊張感をもつことなく、落ち着く。県は違えども、半分は地元みたいなものなのだから。そして、県は同じでも、神戸はおろか、姫路ですら、兵庫県北部鳥取寄り地域に住む僕らは、ちょっと腰がひける。

 別に自慢ではないけれど、今月から、鳥取市内にコメダ珈琲がオープンした。鳥取県としては、2店舗目になる。最初のお店は、米子でオープンした。
 ちなみに、鳥取県の県庁所在地は、鳥取市である。まぁ、わかりやすいとは、思う。県名と県庁所在地の市の名前が同じ方が、自然な感じがする。たとえば、香川県の県庁所在地が、香川市ならわかりやすいけれど、本当は高松市であるわけで、なんだか意地の悪いひっかけクイズみたいな印象を受ける。
 だから、隣りの県に住む僕からすれば、鳥取県の県庁所在地が鳥取市であることに、なんら不都合はないのだけれど、米子市の人々は面白くないらしい。
 確かに、米子も都会だった気がする。それなりには。だけれど、他府県在住歴しかない僕から言わせれば、しかも、関西と東京にしか住んだことがない僕から言わせれば、米子はあまりに西すぎるし、あまりにどっぷりと山陰すぎる。
 関西よりも西で、都会を名乗っていいのは、福岡くらいだろう。あとは、基本的に、西へ行けば行くほど、遠いといった印象だ。どっから遠いかと言えば、関西から遠いのであり、もっと言えば、東京から同心円的にも遠くて、距離的に遠ければ遠いほど、イメージとしては非都会な感じがしてしまう。
 だから、正直なところ、こちらに引っ越して間もなくの頃、鳥取に買い物に行くと言われて、「えっ?」と思ってしまった。なにゆえに、そんな田舎に行かねばならないのか。
 実際に行ってみたら、この辺りよりも都会で、びっくりしてしまったわけだ。当時、都会の匂いがどうしても嗅ぎたいときには、大丸横の花屋のある辺りを意味もなく歩いたりもした。そこは、サラリーマンらしき人や、OLらしき人たちが行き交う唯一の場所だったのだ。車ではなく、人が歩いている場所であった。

 ちなみに、ついでに言っておくと、田舎の人々は歩かない。すべて、車での移動だ。だから、車は一家に一台ではまったく間に合わないので、一人に一台となる。仕方がない。車がなければ、通勤すらできないし、働くことすらできない。
 都会の人のように、駅から歩くなんてこともない。ドア・ツー・ドアが基本である。家の車庫から車に乗って、勤務先の駐車場まで行き、そこから勤務先まで歩くのが関の山だ。下手をすれば、勤務先の駐車場も勤務先のすぐ前だったりするわけで、そうなると、通勤で歩く距離は、16歩とか、メートルで表すよりも歩数で表した方が早いくらいであったりする。

 いつものことながら、話が逸れてる。
 そうだ、コメダ珈琲だった。鳥取県の平井知事が、『鳥取県には、スタバはないけど、砂場(鳥取砂丘)はある』と言ったのは、有名な負け惜しみであるけれど、鳥取市内ということで言えば、スタバどころか、コメダ珈琲すらなかったのだ。
 コメダ珈琲のブランド力を、どう評価していいかは、異論もあるだろうが、僕は、コメダ珈琲が好きだ。まだ、一度も行ったことはないけど。おそらく、スタバよりも、ずっと鳥取には似合ってる気がする。

 僕としては、利用可能な距離にスタバが欲しいので。鳥取市内にも是非ともオープンしてほしいのだけれど、おそらく、鳥取市民はスタバにビビるであろうと予想される。

 鳥取というところは、飲食関係で言うと、全国区で流行っているものでも、流行らないという不思議な味覚地帯なのだ。
 昨年は、食べログで唯一、都道府県別ランキングが掲載されなかった県である。隣りにある県だし、どっかいい店はないかと、ランキングを見ようとしたのだけれど、いくら鳥取県をクリックしても画面が変わらないのだ。よくよく見ると、ほかの都道府県は都道府県名の下にアンダーラインがあって、クリック可能だということを示すユーザビリティになっているのに、鳥取県だけはアンダーラインがない。
 僕は最初、食べログの設計ミスなのかと思ったのだけれど、どうやらそれは濡れ衣だったようだ。要するに、鳥取には、ベスト100に選ばれるような飲食店がひとつもなかったのだ。よくよく考えると、ベスト100を選出するだけのデータがなかったということなのかもしれない。
 しかし、印象としては、鳥取って、ベスト100すら出せないくらい、店がないのか…と、思ってしまったし、正直、どんな県だってベスト100が出せてるのに、鳥取だけ出せないってどうなの? 隣りの県とは言え、それでいいのか?と、鳥取県にもしも肩があるのなら、肩を揺すりながら少し厳しい声で問いただしたいくらいの気持ちではあった。

 だから、米子市が鳥取市のことを面白く思ってなかろうが、馬鹿にしようが、鳥取県というくくりですら、全国区で通用していないのが、妙に悲しい。鳥取だ、米子だと、県内で仲間割れしている場合ではないのだ。と、ついつい老婆心ながらも思ってしまう。
 ガイナーレ鳥取というサッカーチームにしても、鳥取県の地元チームということにはなっているけれど、ホームは鳥取市ということになるし、米子の人々は面白くなかったらしい。
 兵庫県の地元チームと言えば、ヴィッセル神戸だ。でも、兵庫県民としての自覚がまだまだ薄い僕にとっては、神戸と言われても、ピンとこないというのが、正直な気持ちだ。これが、ヴィッセル兵庫だったら、少しは違っていたかもしれない。ほんの少しはだけど。

 そして、ヴィッセル神戸の試合をスタジアムで見たことがないし、応援したこともない僕だけれど、ガイナーレ鳥取の試合はスタジアムで見たことがある。応援はしなかったけど。だって、対戦相手の横浜FCの応援に行ったのだから仕方がない。
 それでも、言い訳がましいかもしれないが、ガイナーレ鳥取の応援をする人々を羨ましいと心底思った。ガイナーレ鳥取は、この人達のチームであり、鳥取の人々のチームであった。

 僕は、横浜FCを応援しているとは言え、横浜に縁もゆかりもあるわけではない。ただ、その時は、少しばかしの繋がりと、カズを応援していただけのことだ。ミーハーとも言えるし、地域性に囚われない自由な選択とも言える。
 でも、僕は、ガイナーレ鳥取を応援している人々が、羨ましかった。この人達は、自分の県のチームだからガイナーレ鳥取を応援しているのだ。それが、自分たちのチームだから、応援しているのだ。正直、こんな人がサッカーの応援に来るんだと思えるような、普通のオッサンオバサンが、たくさんいた。見た目だけで判断すると、『サッカーわかるの?』と聞きたくなるような人たちが、ユニフォームを着て応援している。
 試合は、ガイナーレ鳥取が2点負けていただろうか。外人選手が、パスを出せるタイミングが十分あったのに、強引に自分で持ち込んで無理なシュートを放った。
 『今のは、ダメよ。そんな自分勝手なことしないで、パス出しなさいよ。ねぇ』
と、おそらくは60才を過ぎているように見える婦人が、隣りに座ったご主人らしき人に、声を荒らげて同意を求めた。
 なんだか、ひどく羨ましかった。自分たちのチームと呼べるサッカーチームがあって、その人達は確かに誰よりもサッカーを楽しんでいた。自分たちがプレーするわけではないけれど、本当に楽しそうだった。
 僕も、鳥取県民のフリをして、応援したくなった。ちょっと、ガイナーレ鳥取を、山陰クラスタの兵庫県民にも貸してほしいと、思ったのだ。ということは、実は、結構知らず知らずに僕も、ガイナーレ鳥取を応援していたことになる。

 そのうちにまた試合を見に行きたいと思いながらも、なかなか叶わずにいたら、今回の悲報になってしまった。J2からJ3へ。寂しい気持ちはあるし、残念な気持ちもある。
 しかし、J3に行くんだよね?チームがなくなるわけではない。そう思うと、それはそれで仕方がないし、まぁ、いいかとも思えてきた。決して隣りの県の住民だから、他人ごとで、冷たいわけではない、と、思う。
 個人的な都合を言えば、ナイトゲームよりも、昼間のゲームがいいし、晴れていれば、なお、いい。
 来シーズンこそは、試合を見に行こう。

 よく晴れた日の午後、田んぼの中にポツンとあるようなサッカースタジアムのスタンドで、僕は、隣りの県の住民でありながらも、ガイナーレ鳥取の応援をしている。もしくは、ガイナーレ鳥取の応援をしている鳥取の人々を、応援している。
 そして、願わくば、1年でJ2に戻ってきてほしい。

 

 - 日記みたいなもの ,

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