深き海より、蒼き樹々の呟き

by 深海 蒼樹(ふかみ そうじゅ)

*

単音楽器と言われて、へぇー、って思った昔話を書いてたら、話が長くなったので、『単音楽器と言われて、へぇー、って思った昔話』の序章にしました

   

altosax

 みなさんは、楽器をするだろうか?
 僕は、中学生の頃から、ギターをはじめた。その頃の呼び方で言うと、フォークギターというやつだ。
 世代的に言うと、「TVジョッキーの奇人変人コーナーに出て、白いギターをもらうのが夢です」なんていう冗談がわかるし、松山千春に弾かれていたオベーションギターがどんなに可哀想な音色を出していたかを覚えているし、「モーリス持てばスーパースター」とアリスに言われて、本当にモーリスのギターを買ってしまった恥ずかしい過去ももっている。
 そうだ、僕が、初めて買ったギターは、モーリスのアコースティック・ギターだった。街の楽器屋で、おかんについてきてもらって、買った。すごく嬉しかったけれど、ドキドキで、同時にいたたまれないほどに、恥ずかしくもあった。
 そして、そのギターは、10年以上、ずっと僕の傍にあった。大して、うまくはならなかったけれど。
 そう、全然うまくはならなかったけれど、ジャラ〜ンと、鳴らそうと思えばいつでも鳴らせたのだ。

 東京への転勤が決まったとき、迷ったけれど、ギターは置いていくことにした。おんぼろのアパートで弾くわけにはいかないだろうし、邪魔になると思ったからだ。
 そして、その数年後、僕はなぜか、御茶ノ水で入った楽器屋で、アルト・サックスを衝動買いするという暴挙にでていた。勿論、月賦払いで。
 僕が買ったのは、ヤナギサワのアルト・サックスだった。当時で、18万円くらいしたように記憶している。本当はテナーをやりたかったのだけれど、楽器自体がアルトよりも少し長いだけで、2万円ほど高かったので、安いアルト・サックスにした。だって、ひょっとしたら、全然向かなくてすぐにやめてしまうかもしれないし。
 しかし、結局、僕は、自分でも予想しなかったほどに、サックスにはまった。そして、ほぼ1年後には、このヤナギサワのアルト・サックスを下取りして、セルマーに乗り換えた。勿論、また、月賦で。

 僕は、当時、品川区の大井町に住んでいた。アパートから、15分ほど歩けば、競馬場がある。大井競馬場だ。
 僕は、その競馬場の駐輪場で、よくサックスの練習をしていた。頭上には、首都高速羽田線が走り、競馬場と品川区民公園にはさまれていた。最初から、そこを練習場所にしようと決めていたわけではない。正直、買ってから、どこで吹けばいいんだろうか?と、探してみたら、以外と近いところにうってつけの場所があったのだ。
 おかげさまで、どんなに夜中であろうと、サックスの音がうるさいと苦情を言われたことはない。
 お偉い方が羽田空港をご利用になる前日なんかには、何度か、職務質問を受けたことはあるものの、何度か受けているうちに顔馴染みになったのか、2年もすれば、
「ちょっと聞いていいかな?キミは、ここで何をしてるんだね?」
なんて、
これがサックスの練習以外になにに見えるんだ?
もしくは、
お前のサックスは下手すぎるってことを、遠回しに言われてるのか?
国家権力を代表して、この私服刑事から?
みたいなことはなくなった。

 夜は、ほとんど人通りもなかった。というか、人気(ひとけ)がなかった。だから、逆に、覚えているシーンもある。
 ひとりは、「兄ちゃん、熱心だなぁー、がんばれよ〜」と言いながら、自転車で歩道を走り抜けていった、サラリーマンらしいおっちゃん。
 もうひとりは、駐輪場の金網のむこうで、無言のまま5分ほどじっと僕のサックスを聴いていた黒人。これは、いまだに、謎だ。そして、この黒人は、同じく無言のまま、立ち去っていった。いったいどこから、いつのまにやってきたのかもわからないし、こんな夜中に、これから歩いてどこへ行くのかもわからなかった。
 しかし、真夜中に金網のむこうとは言え、僕をじっと見て立っている黒人という存在が怖かったので、それ以後、僕は、どんなにノリノリで感情たっぷりにサックスをむせび泣かせている時にも、目を閉じれなくなった。

 話が、長い。
 単音楽器というか、単音楽器の話までの道のりが、長すぎて、気持ちが折れた。
 面倒なので、つづきは、次回にゆずることにして、最初は、『単音楽器と言われて、へぇー、って思った昔話』としていたタイトルを、ちょっと変更してこよう。

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