深き海より、蒼き樹々の呟き

by 深海 蒼樹(ふかみ そうじゅ)

*

『羊飼い』について、考える

      2013/10/05

羊飼いの少女

 昔々、僕は羊飼いになりたいと思った。
 そう、おそらくは、誰にだって、人生の中で一度くらいは、羊飼いになりたいと思ったことがあるように。
 もしくは、誰もが、一度は詩人になりたいと思ったことがあるように。

 ここで、僕が言う羊飼いとは、放牧された羊の番をする人と、定義される。
 しかしながら、勿論のこと、僕には放牧された羊たちになんて、ほとんど興味がない。
 それは、ジャン=フランソワ・ミレーの描いた『羊飼いの少女』が、羊そっちのけで編み物に夢中になっているように。
 『アルプスの少女ハイジ』に出てくるペーターが、いつも羊番をさぼって、木陰で昼寝をしているように。

 僕には、はなから、羊の世話をするつもりも、面倒を見てやるつもりも、ないのだ。
 ましてや、羊たちをコントロールしたり、支配しようという気持ちすらない。

 「数えることは、支配することだ」
 確かに、そうだ。支配するものは、いつも支配されるものの数をかぞえる。
 しかし、僕は、放牧された羊の数が元々何頭なのかを知らないし、その数をかぞえる気がない僕には、そもそも羊の数なんてどうでもいいことでしかない。

 けれど、僕は、羊飼いになりたい。
 誰もが、憧れるように。
 そして、その夢が叶ったら、羊なんてそっちのけで、今度こそ『羊飼い』について、じっくりと真剣に飽きるまで考えよう。

 だから、僕は、羊飼いになりたい。

 

 - ひとりごと

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